恐るべき民族の酒【日本酒】

日本酒ってものすごい数の銘柄が全国各地にあります。(全国で1,400以上の酒蔵があり、銘柄は1万以上あると言われております)

※国税庁 清酒製造業の概況/平成28年度調査分より

なので日本酒のことを知らないで大人になった方ってまずいないはずです。

近年、日本酒人気は国内外問わずむちゃくちゃ高まっておりますが、日本酒のことをよく知ってる方って世の中全体でみたら、まだまだ少数派です。

純米、吟醸、生酛、山廃など日本酒って専門用語がたくさんあって、飲んでみないとピンとこない印象があると思います。

普段から日本酒を楽しまれてない方が、わざわざ自分の好みに合うかすら買って呑んでみないとわからない酒にお金を払いませんよね?

酒屋に生まれた私も昔はそうでした…

でも、日本酒って最低限の前提知識があればその凄みがじわじわとわかってくるんです。

国の名前の酒

冷静に考えてみると日本酒って「日本」の国名を冠した酒です。

人間の歴史を辿ってみると、今でこそ宗教の戒律で飲酒を禁止している国や地域がありますが、酒が見え隠れしなかった文明はまずありません。

しかし、その国名をそのまま名乗っちゃってる酒は日本酒くらいです。

例えば、いくらフランスが自国のワインに誇りを持っていたとしても、フランス酒とは名乗りません。

というか名乗れないでしょう。

ワインは世界各国で作っている、言い方を変えると作れてしまうので「おい!なにワインを自分のものみたいにしちゃってんだよ!」というふうに他国から大反発をくらうのは目に見えています。

それがワインを含めた種々の酒と日本酒の決定的な違いです。

本当の日本酒は日本でしか作れません。

原料シンプル、作り複雑の芸術

日本酒は基本的に水と米、そして米麹だけでできています。

植物からアルコールを作る際は糖を酵母が分解する必要がありますが、米には糖分がありません。

その時点で普通は米で酒をつくるのを諦めると思います。

でも昔の日本人は米に並々ならぬ想いがありましたので、米から酒を作るために試行錯誤を続けたのです。

そこで見つけたのが蒸した米からできるカビの一種の米麹を使うという方法でした。

米には糖はありませんがデンプンはあります。そのデンプンを米麹から糖に分解してもらい、そうしてできた糖を空気中に漂う酵母がアルコール発酵させて日本酒は出来上がります。

糖化とアルコール発酵が同時に同じ樽のなかで起こす技術を並行複発酵といい、世界でも類をみない高度な醸造方法です。

日本酒の原酒(割り水で味を調整していない状態)ではアルコール度数は17〜20度くらいあります。同じ醸造酒の仲間であるビールやワインに比べてアルコール度数が高いのも、並行複発酵でより時間をかけてアルコール発酵がすすむためです。

一昔前は日本酒は海外向けに「ライスワイン」と呼ばれたりしていましたが、ワインの原料となるブドウには糖が含まれているためしぼり汁を樽に貯蔵しておけば勝手にアルコール発行が進みます。

こんなことを言っては語弊があるかもしれませんが、あんまり高度な技術を必要とせず、ブドウさえ良ければいいワインができるわけです。

ですから…はるかに高度な技術を要する日本酒をワインと同じ括りにするのは無理があると思います。

日本酒の詳しい製造工程についてはここでは言及しませんが、日本酒は最も作ることが難しい、もはや芸術作品レベルの酒であると思っていただければOKです。

楽しまなければもったい無い!

冒頭でも話しましたように日本には無数の日本酒の銘柄が存在しています。

銘柄が違うんだから当たり前かもしれませんが一つ一つの日本酒の味は全然違います。

同じ地域の酒蔵がそれぞれ作る日本酒の味も全く違ったりします。

僕の地元の山形県鶴岡市には大山地区という古くから酒造りを盛んに行なっている地域があるのですが、そこの酒も飲めば何となく「ああ、この酒蔵の酒だな」とわかるくらい味わいに蔵の特徴があります。

近年の日本酒はトレンドに敏感で、ワインに寄せたフルーティーなものが流行ったりもしますが、最近になってようやく日本酒の基本の飲み方である熱燗や何年も寝かせた熟成酒も注目されています。

実は現代人の日本酒に対するイメージは明治時代に政府よって一回バグってしまっているのです

当時の政府にとって酒は重要な税収源でした。酒税が全体の約40%を占めていたのですから驚きです。富国強兵のために金が必要な政府はとにかく酒を早くたくさん作って売ってもらう必要があったため粗悪な日本酒が世に出回るようになり、熟成酒こそが高級な酒という常識はいつしかなくなってしまいました。

全く明治政府は日本酒に対してとんでもないことをしてくれたと思います。茶道に対してもそうなのですが、日本文化に対する明治政府の考えはかなり浅はかだったといえます。

この点については長くなりそうですのでまた別の機会に書こうと思います。

とにかく、約2000年の長きにわたって培われてきた日本酒の文化はたたれてしまいました。

しかし、日本酒の凄さに世界がようやく気づき始めています。この流れにのって元々の日本酒のあり方が見直されていくと思います。

日本にいながら「民族の酒」日本酒を楽しまないなんてもったいないです♫

今日はこの辺で、ではまた〜

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